自分の想像を大事に出来る人は、相手の想像も尊重できる。


08 Nov
08Nov

新作映画『HALF』脚本担当の中井由梨子(mosaique-Tokyo)です。

11月1日(日)に第4回目となるワークショップが開かれました☆

写真)左から小貫莉奈さん・橋谷拓玖さん

昼は男、夜は女、と体ごと変わってしまう特異体質を持つミナミは、恋人の周作にその事実を打ち上げられず悩みます。周作は彼女との結婚を考えていますが、どこか踏み込ませない態度のミナミに少し不満を見せ始める…、そんなシーン。

写真)左から沖﨑健司さん・吉木遼さん

この日は、奥渋のサロンバー・ハーミットをお借りして、主人公ミナミとその恋人、周作との夕食シーンを演じてみる☆

撮影場所が変わるように、

ワークショップの場所も変えていく

のがSCT流。写真)左から杉山宗賢さん・松谷鷹也さん

舞台ではいわゆる”稽古場”を本番さながらに作り、その世界観でがっちりと作っていくことが求められるけれど(だって本番もずっと同じ場所だから)

映像はシーンによってとにかく撮影現場が変わる、変わる。

台本に書かれてる内容だって、ロケ地によって臨機応変に変えます。

たとえばこのシーンの場合、台本のト書きには

「ミナミと周作が部屋で夕食を食べている」

としか書かれてませんが、台本とにらめっこして自問自答すると、次々とギモンが出てきます。

食べている場所はどこ?(ダイニング?リビング?キッチン?)

何を食べてる?(洋食?和食?おかずは?)

何を飲んでいる?(お酒なら種類は?)

食器はどんなもの?

部屋の明かりはどんな感じ?

二人はどんな服を着てる?

今、何時?

……

突き詰めれば突き詰めるほど、延々と出てくる!!

それにいちいち、自分の中で答えてあげることが

本を読む、ということ。

写真)左から小貫莉奈さん・橋谷拓玖さん


もちろん、自分の想像してディテールと、現場で監督が指示したものとは違うことが多い。

けれど、一度でも自分で設定を決めて本を読んだ人なら、例え自分の想像と違っても

スッと現場に溶け込める。

なぜなら、

自分の想像を大事に出来る人は、

他者の想像も大事に出来るから。


”なんとなく”のイメージのまま現場に入ってしまった俳優は、

「え、洋食だと思ってたけど和食なの? うーん、やりづらいな…」

って思ってアタフタしたり、急にやる気失せちゃったり、

「なんで和食なんだよ、この監督、センスないなあ」

と、監督を批判したりし始める。

違います。

分かっていないのは、自分のほう。

ざっくりしかイメージしていないから、監督の意図が掴めないのです。

もし、本当にイメージを固めようと思ったら、人物をよくよく見つめなければなりません。

この場合、夕食を作ったのは周作。

周作という人物のライフスタイルをよく考えれば、彼がどんなものが好みで、毎日の食生活がどんなものなのか、ということだったり、周作は優しいからミナミの好みを知っていて、彼女の好物を作ったのかもしれない…など、いろんな想像が導き出されてきます。その結果、

「きっと周作なら〇〇を作るはず」

という答えが出てくるのです。


ミナミ役 福岡瑠璃さん・周作役 松浦正太郎さん 


その過程は、監督も同じです。

現場の中で、監督ほど本と向き合っている人はいません。

そういう意味でも、監督と俳優は、本というものを解剖し、表現しようとする同志。

同じ過程を踏んだ同志なら、互いの想像を理解し合えると思いませんか?

「あなたはそう考えたんですね、私はこうでした!」

ただ、それだけだっていうことを、スッと受け入れられるようになる。

どっちが正解か、なんてないんだってことが、感覚的に分かるから。

だから、現場で監督のイメージを尊重できる俳優になれるのです。

ミナミ役 福岡瑠璃さん・周作役 松浦正太郎さん

良い俳優になる方法は、ほんとうはとっても簡単。

良い俳優とは、

本を読める俳優。

本を読むとは、

先入観ナシに本を受け入れること。

「私ならどうするか」

という、自分の都合で登場人物を読んでいても、本当の姿は見えてきません。

それはただの読書です。

楽しみのために台本を読むなら、それでも良い。

でも、俳優として、演じるために本を読むのなら、汲み取ること。

本の世界を、本の意図を、本の中の人間たちを。

そしてそれは、正解を探すのとは全く違うことなんです。

汲み取ろうとすれば、許容できる。

「ありえない」と思える監督の指示も、

共演者が考えた「何言ってんの?」とツッコみたくなるようなことも

全部、自分の想像と同じ場所にあるんだ、って分かる。


SCTW.Sでは、俳優がシーンを演出することも多々あるんです。

それは、演出家として現場に立つと、まったく変わる視点を経験してもらいたいから。

他にも現場にいるスタッフたちの立場になることを重要視してます。

助監督

カメラ

照明

音声

美術

衣裳

他にも多くのセクションが1シーンのために何日も何時間もかけて準備を続けている。

その想い。


映画芸術は、人と人との繋がりが織りなす芸術です。

だから、織ろうとする努力が必要になる。

自分の糸と、他人の糸をしっかり絡ませて、今まで誰も見たことのない布を広げるために。


いよいよ折り返し地点のワークショップ。

第5回へ続きます!!





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